
【夢の中の騎士】
これまでの粗筋!
テジタルワールドに迷いこんだヒナタ。元の世界へ帰る手懸かりを求めて旅をする中、ひょんなことから光のスピリットを手に入れ、伝説の闘士・ヴォルフモンへと進化を果たす。
そしてその日の夜のこと、ヒナタは不思議な夢を見るのであった。
『……ヒナタ』
空も地もすべてが純白に塗り潰された世界で、語りかけてくるのは白狼を模した鎧を纏う戦士。否、その名をヴォルフモン。
スピリットそのものであり、今はヒナタそのものでもあるはずの、光の闘士。
「ヴォルフモン……」
名を呼べばヴォルフモンは小さく、けれど満足げに微笑む。その理由を、ヒナタは知っていた。
初めてのことではない。これは何度も見た夢。いや、何度も語りかけてくれたのに、これまでヒナタが応えることのできなかった、ヴォルフモンからの交信。
スピリットを手にしたことでようやく確かな繋がりが生まれ、応えることができたのだと、ヒナタは理解していた。
『ありがとう。君が応えてくれたこと、私の意志を継いでくれたこと、礼を言わせてほしい』
自らの胸に手を当て、まるで祈るように彼は言う。
『そして……君を巻き込んでしまったことを、謝りたい。すまなかった』
そう言って深々と頭を下げる。
「どうしてあなたが謝るの」
巻き込まれた覚えは、あるにはあるが、しかし彼にではない。仕方のない状況に追い込まれた。追い込んだのは世界をどうこうしたいらしいおかしな連中だ。だからスピリットを手にした。それは他でもない、自分の意思だ。
「力を貸してくれて、助けてくれて感謝しているわ。ありがとう」
嘘偽りのない素直な思いだった。
そんなヒナタに、ヴォルフモンはまるで安堵するように笑みを浮かべる。
『ありがとう』
なんて、お礼を言っているのはこちらだというのに。思わずくすりとヒナタは笑う。しかしヴォルフモンは気にする様子もなく、ただ真っ直ぐにヒナタを見据える。
『君の剣となろう。いついかなる時も君を守り、君の敵を打ち倒すと、そう誓おう』
まるで姫君にかしずく騎士のように、ヴォルフモンは片膝をついてそんな誓いを口にする。
ヒナタもまたそんな彼の瞳を真っ直ぐに見詰める。自らが手にした剣の、背負った使命の重みを確かめるように。
それは二人の騎士の、始まりの夜の物語――
-終-