
【Beyond the Milky Way】
あの空の彼方には、一体どんな世界が広がっているのだろう。
見上げれば視界を埋め尽くす満天の星空。宝石箱をひっくり返したような無数の煌めきは、今にも降って落ちそうで、手を伸ばせば苦もなく届きそうにさえ思えた。
君は今、どこでどうしているのだろう。
空さえ繋がらない君の世界はあまりに遠く、呼び掛けたところで声も届かない。それでも、この空を見ていると叫ばずにはいられなかった。
君はまだ、僕を覚えているだろうか。
幼かったあの頃の君は、ともにこの世界を旅した君はもういないけれど、大人になった君の中に、思い出と絆はまだ残っているだろうか。
願わくばあの日々をもう一度、とは言わないけれど、あの日々の先にある今を、僕らが守りたかったこの未来を、叶うのならば君とともに生きてみたかった。
星が好きだった君は旅の最中、よく寝物語に君の世界の星の話を聞かせてくれた。
月が七つ、日が七つ廻ったその日は星に願い事をする日だと、そう言っていた。会いたくても会えない、星の川に隔たれた二人もその日だけは会うことができるのだという。
あの頃はまだ僕も幼くて、ならこの旅が終わってもその日になればまた会えるのかなと、そんなことを聞いて君を困らせてしまった。
けど君は、眉をひそめて、腕を組んで、少し考えて、じゃあ毎年二人で願おうと、そう言ってくれた。遠い世界まで届くかはわからないけれど、二人で願えばいつかは叶うかもしれないと、そう言ってくれた。
ただのお伽話だなんて、今なら僕にもわかるけれど、それでも僕は、この日がやってくると願わずにはいられない。
馬鹿げているだろうか。こんな僕を見たら、君は笑うだろうか。
いいや、優しい君はきっと、約束を覚えてくれているのだろう。もし願いが叶ったら、「やっと会えた」と、僕を抱きしめてくれるのだろう。
そんな気がするから、どうしてかそう確信しているから、僕はこうして星空を見上げているのだ。
ふふ、と笑って、瞼を閉じて君を思い浮かべれば、どうしてか知らないはずの今の姿がいやにはっきりと見えて、嗚呼、そうだったねと、僕はまた笑う。
目を開いてもう一度、遠い遠い彼方の星々を見渡す。
そっと夜空に手を掲げ、「また来年」と、そう笑いかける。「また来年」と、そんな言葉が返ってきた気がした。
-終-